OpenAIが発表した、Codexに関する観察研究の結果を見てみましょう

元論文:The Shift to Agentic AI: Evidence from Codex

今回の論文は、OpenAIが膨大なCodexの利用ログを分析した結果をまとめたもので、AIの役割がチャットボットから「ユーザーに代わって作業を実行するエージェント」に移行しつつあることを示唆しています。

研究の方法

1. データの収集

Codexの利用者は、個人アカウントの利用者、組織アカウントの利用者、OpenAI内部の労働者の3グループに分けられ、個人アカウントはFree・Go・Plus・Proプラン、組織アカウントはBusiness・Enterpriseプランと定義されています。
データの収集にあたっては、著者らが個別のメッセージ本文を読まない形で匿名化・集計されたと説明されています。

2. 評価

評価にあたってはCodexを使ったかどうか(利用者数)だけでなく、CodexとChatGPTを合わせた出力(トークン)のうち、どの程度の割合をCodexが占めているかも重視されています。

さらに、利用者がCodexに入力している指示をAIが自動的に分類し、利用者の「特徴」を大きく以下の3つに分けています。

  • Developer:開発者
  • General Knowledge Worker:文書の作成やデータの整理など、一般的な仕事に使う人
  • Personal:趣味や学習など個人的な目的で使う人

組織で使っているユーザーに関しては職種の情報をもとに自動で分類され、OpenAI社内のユーザーは社内にある情報を使って分類されました。

結果

1. Codexを使う人は増えているが、広がり方には差がある
Figure 2:ユーザー分類およびユーザーの特徴ごとに見たCodexの利用状況
Johnston, D et al. (2026). The shift to agentic AI: Evidence from Codex.

過去28日間にCodexを使った個人ユーザーは1%未満でしたが、組織ユーザーでは17.3%が、OpenAI社内ではほぼ全員が使っている状態でした。
また、全出力トークンのうちCodexが占める割合を見てみると、OpenAI社内では99.8%がCodexによるものでした。一方組織ユーザーでは63.3%、個人ユーザーでは16.5%という結果になっています。

Figure 2によると、Codexの利用はDeveloper以外のGeneral Knowledge WorkerやPersonalの方々にも広がっていることが示唆されていますが、個人ユーザーや組織ユーザーでは依然開発者による活用が中心となっています。

2. 最初は技術職が中心だったが、少しずつ他の職種にも広がっている
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Figure 3:職種ごとのCodexの利用状況
Johnston, D et al. (2026). The shift to agentic AI: Evidence from Codex.

Figure 3では、組織ユーザーのエンジニアが出力した内容の26.8%がCodexによるものであったことが示されており、年初と比較すると約5倍に広がっています。
一方で、法務のような非技術職ではCodexの利用はまだ少なく、Codexによる出力は1.9%にとどまりました。

ただし、全体の出力量で見ると組織アカウントのエンジニアでは88.3%、法務でも17.6%がCodexによるものであったことが確認されており、法務の一部のユーザーが積極的に活用していることが示唆されています。

OpenAI社内のデータを見てみると、エンジニアは2026年3月までにAI利用の90%以上がCodexとなっており、他の職種においても90%以上に達したと報告されています。
また、法務や採用のように最初はあまり使っていなかった職種では、2026年4月初めではAI利用のうちCodexが占める割合は約20%程度でしたが、1か月以内に約75%まで増えました。

3. Codexは、コードを書くためだけの道具ではない
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Figure 5:Codexの用途
Johnston, D et al. (2026). The shift to agentic AI: Evidence from Codex.

Figure 5を見てみると、Codexはコーディング専門のAIとしてだけでなく、ソフトウェア開発の様々なプロセスを補助するAIになっていることが読み取れます。
OpenAI社内では、研究、計画、コミュニケーション、採用、営業、製品開発、データ分析など、非常に幅広く利用されているようです。

このことから、Codexはコーディングの支援だけでなく、さまざまな仕事の補助に活用できる可能性があると考えられます。

4. 個人ユーザーがCodexに任せる作業は、徐々に複雑になっている
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Figure 6:個人ユーザーがCodexに依頼する作業の複雑さ
Johnston, D et al. (2026). The shift to agentic AI: Evidence from Codex.

2025年12月には「人間がやると1時間以上かかる」と考えられる作業をCodexに頼んだ人は35.4%でしたが、2026年5月には70.2%まで増えました。
さらに、「人間がやると8時間以上かかる」と考えられる作業を頼んだ人は、2.1%から25.6%に増えています。

また、Figure 6bでは会話の最初の依頼が一番複雑であることが示されています。これは、ユーザーがまず大きな作業をCodexに任せ、その後で細かく調整していることを示唆しています。

5. OpenAIの上位1%のヘビーユーザーは、1日あたり約71時間分Codexを動かしている
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Figure 9:複数のCodexの作業を同時並行させているユーザーの割合
Johnston, D et al. (2026). The shift to agentic AI: Evidence from Codex.
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Figure 10:Codexが稼働していた延べ時間
Johnston, D et al. (2026). The shift to agentic AI: Evidence from Codex.

個人ユーザーの63.9%および組織ユーザーの67.4%は、複数のCodexの作業を同時並行させていませんでしたが、OpenAI社内では1つの作業だけを進めていた人は10.7%となっており、28.6%の人は最大5つ以上のCodexの作業を同時並行させていました。

加えてFigure 10を見てみると、OpenAI社内の中央値のユーザーでも2026年6月11日にはCodexが延べ2.5時間分動いており、上位1%のユーザーでは1日あたり延べ71時間分もCodexが動いていました。
つまり、上位ユーザーはAIに作業を任せながら、自分はその進行を管理するような働き方をしていることが推測できます。

注意点

  • 今回の研究は、Codexの利用が実際に生産性、成果物の品質、売上、雇用をどれだけ変えたかを示すものではありません。
  • 出力トークンの増加は「AIが多く出力した」ことを示しますが、それが有用な成果物であったか、および高品質な仕事であったかまでは示されていません。
  • OpenAI内部は、GPTへの習熟、低価格な利用コスト、組織的支援、知識の共有、開発対象との近さなど、Codexにとって非常に有利な環境であったことに注意が必要です。

Human “on” the loop

Human in the loop

「Human in the loop」は、ざっくり言うと「AIを活用するプロセスの中に、必ず人間の判断や介入を組み込む考え方」となりますが、これは重要な局面で人間が介入できるようにしておくことで、システムの精度や安全性を担保することを目的としています。

ゆえに、Human in the loopにおけるAIの役割はあくまで補助であり、決定は基本的に人間が下すようになります。

AIの自律性を尊重しすぎると…

ただ、最近はCodex、Antigravity、Claude Codeなどが広く使われるようになったこともあり、AIによってある程度自律的に作業できるようになりました。極端な話、「最初に作業の内容を説明すると、追加の指示なしでもAIが自律的に考えながら作業を完了させる」ことが可能です。

ただし、「AIエージェントが会社のデータベースをたった9秒で丸ごと消し飛ばした」という事例も報告されており [1] 、完全にAI任せにしてしまうと取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。
ゆえに、本来は作業の合間で適宜ユーザーに許可を求める設定にしておくほうが望ましいのですが、その確認が過剰になりすぎるとAIの自律性によるメリットを享受できなくなってしまいます。

Human on the loop

このような状況において提唱された概念が「Human on the loop」で、こちらは「基本的にAIが自律的に作業を進めるが、人間は常時または定期的にその動きを監督し、必要なときに介入する」という考え方になります。

Human in the loopと類似しているように見えますが、Human in the loopの場合は「人間が主体、AIは補助」であったのに対し、Human on the loopの場合は「AIが作業の中心を担い、人間はその動きを監督しつつ介入・評価する立場」に回ることになります。
まさに、AIの性能が大きく向上したからこそ成り立つ概念であるといえます。

Human on the loopに必要なのは…

この仕組みを実現するためには、「業務のリスク分類」「AIの作業の可視化」「人間が介入する条件の明確化」「ログが残り、監査ができる状況」「人間側の能力」「段階的なAIの導入」が必要となるでしょう。
特にAIの作業の可視化と人間が介入する条件の明確化は非常に重要で、「AIが動いている間に人間が何を見て、どのタイミングで止めて、誰がどう責任を持つか」を事前に設計しておかないと、AIのハイリスクな行動を見逃したり、本来適切かつ無害な作業をストップさせてしまう可能性があります。

加えて、人間側の能力も今まで以上に必要になると考えられます。

具体的には、

  • AIに適切な指示を出せる能力
  • AIの出力を批判的に読める能力
  • ハルシネーションや情報の欠落を見つけられる能力
  • 複数のAIの出力を統合できる能力
  • どこまで任せてよいかを判断できる能力

こうした能力が要求されるようになるでしょう。

簡潔にまとめると

Human on the loopは、AIを放置する仕組みではありません。AIが自律的に動く範囲をあらかじめ設計し、人間が適切に監督しつつ介入できるようにする仕組みです。

少々誇大妄想になりますが、近い将来、AIが自ら考えて行動するのが当たり前の時代になるかもしれません。そうなると、リスクを減らしつつメリットを最大限享受するために、Human on the loopの考え方がさらに重要になってくるでしょう。


参考資料

[1] Disclose.tv「Claude-powered AI coding agent deletes entire company database in 9 seconds」
https://www.disclose.tv/id/zo22mbx8rf/

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