調剤薬局の薬剤師が安易にSNSに投稿すべきではないコンテンツ14選
薬剤師の皆様、SNSはされておりますでしょうか。私はXとLinkedinのアカウントを持っていますが、前者はnote記事の更新のお知らせとしょうもない発信に終始しており、一方後者は情報収集をするためのアカウントと化しています。
客観的に評価すると、お世辞にもSNSを活用できているとは言えない状況です。
一方で、非常に有益な情報を発信されている方もいらっしゃいます。
自身(の薬局)の取り組みや学んだことを共有されていたり、話題になっている医療分野の話題に対して意見や補足をされていたり、さらには自身が進めている大きなプロジェクトの情報を発信されていたりと、まさに多くの人の目にとまるSNSを有効活用されていると言えます。
このような薬剤師の方々を見ていると、「私も皆さんのように、SNSで有益な情報を届けられるようになりたい!」と憧れてしまいますが、その前に安易にSNSに投稿すべきではないコンテンツが何なのかも理解しておかないと、最悪の場合薬剤師として働けなくなる可能性もあります。
というわけで今回は、「調剤薬局の薬剤師が安易にSNSに投稿すべきではないコンテンツ14選」というテーマでお送りしたいと思います。
画像・動画系
ここで紹介する例は、そもそも私物で撮影すべきではない情報です。
それでも万が一、何かの手違いで撮影してしまった場合に、脊髄反射でSNSにアップすることだけは避けてもらいたいので、情報提供します。
1. 処方箋の写真
処方箋の写真を安易にSNSにアップすべきではありません。一度冷静に立ち止まりましょう。
患者さんの氏名、医療機関名、処方医、薬剤名、用法用量、保険情報など、要配慮個人情報を含む大量の情報が含まれています。
たとえ氏名や生年月日を黒塗りしたとしても、薬剤名、診療科、医療機関名、日付、地域などから、患者さん個人が推測・特定される可能性があるため、注意が必要です。特に希少疾患に対する処方などの「珍しい処方」の場合は、処方内容だけで患者さんの現病歴や受診の状況が特定できてしまうことがあります。
どうしても教育目的で共有したいのであれば、その内容を十分に抽象化し、個人や医療機関が絶対に特定されない形に加工する必要があります。
2. 薬袋・薬情・お薬手帳の写真
薬袋・薬剤情報提供文書(薬情)・お薬手帳の写真も、安易にSNSにアップすべきではありません。
これらには、患者さんの氏名、薬剤名、服用方法、薬局名、調剤日などが記載されています。先述の通り要配慮個人情報を含む大量の情報が含まれるため、慎重に扱わなければなりません。
さらにお薬手帳の場合、患者さんの住所や連絡先、複数の医療機関の受診歴、既往歴、併用薬、アレルギー歴、副作用歴などが含まれている場合があり、さらに注意が必要です。
3. 薬歴
薬歴の中身は、薬剤師が業務上知り得た情報のかたまりです。服薬状況、副作用歴、アレルギー歴、疑義照会の内容、患者さんの訴え、家族構成、生活習慣など、様々な情報が記録されています。
繰り返しになりますが、たとえ患者さんの氏名や生年月日を隠しても、具体的な経過や薬剤の組み合わせ、来局日などから個人が特定される可能性があることにも注意が必要です。
また、電子薬歴の画面を撮影すると、意図せず別の患者さんの情報、スタッフ名、社外秘の情報などが写り込むこともあります。ゆえに、薬歴の画面はSNSに投稿するかどうか以前に、業務外の用途で撮影すること自体を避けるべきです。
4. レセコン関連の画面
レセコンやオンライン資格確認に関する画面の写真も、安易にSNSにアップせずに落ち着いてよく考えましょう。
レセコン関連の画面には、保険者番号、被保険者情報、公費関連の情報、受付情報などが写り込む可能性があります。
特に、オンライン資格確認やマイナ保険証に関する画面をアップしてしまうと、内容によっては患者さんのプライベートな部分が特定されてしまうため、興味本位で画面を撮影してはなりません。
システムトラブルや珍しいエラー表示を共有したくなることもありますが、それはSNSではなくベンダー、管理者、社内の正式なルートで報告しましょう [2] 。
5. 患者さんの写真・動画
患者さんの写真や動画を無断でSNSに投稿することは、絶対にやめましょう。仮に本人から同意を得ていたとしても、特定の薬局を利用していること、在宅医療を受けていること、特定の疾患に関係するイベントに参加していることなどが周囲に知られてしまう可能性があるため、場合によっては守秘義務違反につながると考えられます。
薬局の雰囲気を伝えたいときに待合室の写真や動画を撮影することがあるかもしれませんが、その場合でも、なるべく患者さんが写らない構図にしたり、イラストや・像素材を使ったりしたほうが無難です。
6. 患者さんのご家族、介護スタッフ、施設利用者の写真
在宅医療の現場では、患者さんご本人だけでなく、ご家族や介護スタッフ、他の施設利用者の情報にも注意が必要です。
ご本人だけでなく、ご家族が写っている写真、介護スタッフとのやり取りの様子、施設内の写真をSNSにアップロードすると、ご本人やご家族の情報が特定される可能性があります。
在宅医療の現場は、薬局内以上に個人の生活空間に近い場所です。SNSにアップロードすることを前提に写真や動画を撮影する場所ではないことを理解しておきましょう。
7. 訪問先の写真
訪問先の写真も、SNSにアップロードする目的で撮影すべきではありません。薬剤師にとっては日常の在宅業務の一場面でも、患者さんにとってはプライベートな生活空間です。その生活空間を撮影してSNSにアップロードすることは、プライバシーの侵害になります。
加えて、映り込んだお薬カレンダーや服薬ボックスに薬剤名や日付が写っていれば、場合によっては薬剤名も特定されてしまいます。
もし薬局内での情報共有目的で撮影が必要なのであれば、事前に許可を取ったうえで可能な限り薬局所有の端末で撮影し、目的が達成されたら速やかに端末から削除しましょう。
8. 調剤室の写真
調剤室には様々な種類の薬剤が保管されていますが、その保管状況や在庫状況を写真に収めてSNSに投稿してはなりません。
これは守秘義務や情報漏洩というよりは、防犯上の観点から不適切です。
特に、医療用麻薬の金庫、覚せい剤原料や向精神薬を保管している棚、各種鍵の場所、監視カメラの位置、警備体制などが写りこんだ写真を投稿してしまうと、医薬品の盗難のきっかけになってしまう可能性があります。
加えて、壁に貼り付けてあるメモ類の映り込みにも注意が必要です。
IDやパスワードを壁に貼り付けている場合(非推奨)は、不正アクセスの原因になります。
「個人情報が入っていないから大丈夫」ではありません。
薬剤師は医薬品の安全かつ適切な管理・使用を指導する立場であることを、忘れないようにしましょう。
テキスト系
写真や動画でなければOK、というわけではありません。テキストだけでも情報漏洩やプライバシーの侵害といったリスクがあります。
写真や動画の時と同様、SNSに投稿する前に一度立ち止まって考えることが重要です。
1. 患者さんの具体的なエピソード
本人が見て自分のことだと分かるようなエピソードを投稿すると、守秘義務違反に該当する可能性があります。
名前を出していなければOKというわけではなく、来局日、地域、年齢、性別、処方内容、相談内容、話し方などを組み合わせれば、場合によっては個人の特定が容易になります。
加えて、患者さんをからかうような表現や「困った人」として扱う表現を投稿してしまうと、自分だけでなく薬局全体の信頼を大きく損ないます。
守秘義務云々の前に、医療の担い手として不適切な行動は慎むようにしましょう。
2. 医薬品の在庫状況の公開
例えば薬局公式SNSで「○○が不足していますが、当薬局なら対応できます」「○○入荷しました、お困りの方は当薬局へ」などと投稿すると、商品名が明らかで、不特定多数が閲覧でき、来局・購入・調剤につなげる意図があると見られやすいため、投稿が広告とみなされ、医療広告規制に関するガイドラインに抵触する可能性があります。
また、医療用麻薬、覚せい剤原料、向精神薬などの在庫の状況をSNSにアップロードすることは、盗難や不正入手などのきっかけになりうるため、防犯上の観点からも絶対にやめましょう。
3. インシデント、ヒヤリ・ハット、アクシデントなど
医療安全の観点から、インシデントやヒヤリ・ハットの事例は共有されるべき大切な情報です。
しかし、それをSNSに生々しく投稿してはいけません。
特に投稿のタイミングによっては、該当患者さんや関わったスタッフ、関連医療機関・施設が特定される可能性があるだけでなく、内部の安全管理体制に対する不信感にもつながります。
ゆえに、医療安全の観点から事例を外部に発信する場合は、一般化した注意点・再発防止策として情報を整理してから、「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」などの機関に報告すべきです。
4. この薬は「絶対」効くなどといった、効果や安全性の断定
医薬品に関して、「絶対効く」「副作用がない」「誰でも安心」「これを飲めば大丈夫」などと断定する投稿も避けなければなりません。
医薬品の効果や副作用は様々な要素によって変動しうるものですが、それを薬剤師がSNSで断定する形で発信すると、一般の方々が自己判断で医薬品を使ったり、受診を遅らせたり、処方された薬を中断したりすることにつながります。
また、薬機法第66条では、「医薬品等の効能、効果または性能について、医師その他の者が保証したものと誤解されるおそれのある記事を広告・記述・流布することも、誇大広告等に該当する」とされています [3] 。
薬剤師が医薬品に関する情報を発信する場合は、その効果だけでなく、注意点、限界、副作用、改めて受診が必要なケースなどの情報も併せて伝える必要があります [5] 。
5. 患者さんの体験談、口コミ、ビフォーアフター的な投稿
例えば、「この薬局に来て良くなった」「薬剤師さんのおかげで治った」「服薬指導で改善した」などの患者さんの体験談にも、注意が必要です。
たとえ患者さんが好意的に話してくれた内容であっても、医療サービスに関する体験を広く発信することにより、「他の人でも同じ効果が期待できる」と誤解を与える可能性があります。
厚生労働省の医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書では、SNSにおける体験談や、医療機関公式アカウントのSNSに掲載されたビフォーアフター写真が、広告が禁止される事例として扱われています [6] 。
薬局の価値を高めたいと考えるのは正しいことですが、患者さんの体験談を広告のように使うことは、個人情報と広告規制の両方の観点から見てリスクになります。
6. 薬局のサイバーセキュリティに関する投稿
特に認証関係の投稿は絶対にやめましょう。「IDとパスワードは同じ数字」といった投稿も厳禁です。
また、薬局内のWi-FiのSSIDとパスワードをSNSに投稿するのも、非常に危険です。
仮に患者さん用Wi-Fiと業務用ネットワークが十分に分離されていない環境でSSIDやパスワードが第三者に知られると、電子薬歴、レセコン、プリンターなどへの攻撃の足がかりにされるおそれがあります。
また、Wi-Fiの認証情報が公開されると、薬局の回線が不正利用の踏み台にされる可能性もあります。患者さん向けWi-Fiを提供する場合でも、業務用ネットワークとは必ず分離し、SNSでSSIDやパスワードを広く公開するのではなく、必要な人に薬局内で案内する程度に留めるのが安全です。
投稿してよいか迷ったときは…
SNSに投稿してよいかどうか迷ったときは、最低限以下の5点を確認しておきましょう。
- 患者さんやご家族が特定されないか
名前を隠していても、薬剤名、日付、地域、年齢、性別、施設名などで特定されることがあります [1] [2] 。 - 現在治療中の疾患や実際の治療の内容が推測されないか
極端な話、薬剤名だけでもこれらの情報が推測できることがあります [2] 。 - 業務上知り得た情報ではないか
薬剤師として知った情報は、たとえ雑談のように見えても、守秘義務の対象になり得ます [1] 。 - 医薬品の効果を過度に強調していないか
絶対効く、副作用がない、誰でも使えるなどの表現は避けるべきです [3] [5] 。 - 自分や家族が患者さん側だったら、嫌な気持ちにならないか
法律やガイドライン以前に、患者さんの立場に立って考えることが大切です。
少なくとも私は、このくらい慎重なほうがよいと思っています。
調剤薬局の薬剤師がSNSを使うときに最も大切にすべきことは、SNSに投稿したいという気持ちよりも、患者さんをはじめとしたステークホルダーからの信頼を守ることです。
信頼を積み重ねるのは非常に大変ですが、逆に崩れるのは一瞬なので、安易に自分の仕事の様子をSNSに発信しないよう、十分注意しましょう。
補足資料:今回の記事の内容をまとめた画像
参考資料
[1] e-Gov法令検索「刑法 第134条 秘密漏示」
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
[2] 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
[3] 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html
[4] e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第68条 承認前医薬品等の広告の禁止」
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
[5] 厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/000359881.pdf
[6] 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第5版」
https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf
