「AI生成」と判定されたコンテンツを評価するときは…
情報元(ITmediaの記事):Claudeの“見えない透かし”適用開始 Fable 5.1とMythos 5.1が出力する文やコード、画像に付与 日本も対象
米Anthropicが、AIアシスタント「Claude」が生成した文章や画像に、AI生成物と示す“透かし”を入れる運用を始めた。9月1日(現地時間)に発表した最新モデル「Claude Fable 5.1」と「Claude Mythos 5.1」が対応し、提供開始の時点から出力に透かしが入っている。
ITmedia「Claudeの“見えない透かし”適用開始 Fable 5.1とMythos 5.1が出力する文やコード、画像に付与 日本も対象」
“https://www.itmedia.co.jp/news/article/2609/03/2000001110/” より一部引用
こちらは、以前から話題になっていたClaudeの「透かし」に関して、Fable 5.1とMythos 5.1の出力に適用されるようになったという記事です。
それ以前のモデルに関しては順次対応されるようですが、現時点におけるスケジュールは未定となっています。
Claudeの、目に見えない「マーク」
2026年8月、Anthropicは、Claudeが生成・処理したコンテンツに機械で読み取れる「マーク」を付ける方針を発表しました [1]。
この「マーク」は、大きく以下の2種類に分かれます。
1. 文章そのものに埋め込まれるマーク
LLMは、それまでに生成した文章などをもとに、次に置く単語や文字(厳密にはトークン)を選びながら文章を生成していきます。その際、意味や自然さがほとんど変わらない複数の候補(つまり、どれが選ばれても自然に見える)がある場合、どれが選ばれるかに関しては一定の「ランダム性」があるといえます。
Claudeの文章に埋め込まれるマークは、この「ランダム性」を調整し、文章の意味や読みやすさを損なわないようにしながら、文章全体に(統計的に)検出できるパターン(マーク)を残す仕組みとなっています [1] [3] 。
Anthropicが実際に採用したのは、Google DeepMindが開発した「SynthID-Text」を基礎とする方法ですが、SynthID-Textの研究ではこの仕組みによる文章の品質の有意な低下は認められず、約2,000万件のGeminiの応答を対象とした評価でも、ユーザーの反応に明確な悪影響は確認されませんでした [3] 。
この仕組みは、文字を追加したり目に見えない記号などを挿入したりするわけではないため、人間の目でマークの有無を見分けることはほぼ不可能と考えられます。
2. 画像などのファイルに付与される署名付きの来歴情報
ClaudeがPNG、JPEG、SVGなどのファイルを作成すると、「C2PA」というマークがファイル内部(メタデータ)に埋め込まれる場合があります [2] 。
C2PAは、「誰が、いつ、どの機器やソフトで作成・編集したか」という情報がデジタル署名付きで記録されているものなので、例えばClaudeで生成された画像にC2PAが埋め込まれていれば、Claudeで生成された画像であることがわかるようになっています。
また、C2PAが埋め込まれたデータを第三者が書き換えた場合、デジタル署名が無効になるため、データが改ざんされた可能性があることを検知することも可能です。
ちなみに、ChatGPTやCodexで生成された画像にもC2PAが埋め込まれています。
検出されるのは、あくまでAIが関与した「可能性」
仮に先述のようなマークが検出された場合は、「該当するコンテンツの制作過程にClaudeが関与した可能性がある」と解釈することができますが、逆にそれ以外の情報は得られないため、マークが検出されたことだけで以下の内容を評価することはできません。
- コンテンツ自体の質
繰り返しになりますが、マークの検出でわかるのは「該当するコンテンツの制作過程にClaudeが関与した可能性がある」ということのみなので、コンテンツの質自体は別で評価する必要があります。 - 人間・AIがそれぞれどの程度関与したのか
例えばテキストの場合、人間が書いた文章をClaudeで校正した場合や、翻訳、要約、ファイル形式の変換を依頼した場合でもマークが付く可能性があります。
ゆえに、マークの検出だけを根拠に「本人が書いていない」「盗用した」「人の判断が介在していない」と結論づけることはできません。
逆に、マークが検出されなかったからといってAIの関与がなかったと断定することもできません。
例えば短い文章、事実を簡潔に並べた文章、校正による変更が少ない文章、コードなどではパターンを残すための選択肢が少なくなりますし、大幅な書き換えや翻訳によって文章のマークが弱くなる可能性もあります。
さらに、C2PAもファイルの再保存、ファイル形式の変換、スクリーンショットなどによって失われる可能性があるとされています [1] [2] 。
よって、非常に簡潔にまとめると…
- マーク検出
コンテンツの作成の過程において、何らかの形でClaudeが関与した可能性があることを示唆するが、Claudeが関与したことを100%の精度で証明できるわけではない。 - マークなし
生成されたコンテンツ内に、統計的パターンやC2PAは検出されなかったことを示唆するが、Claudeが関与しなかったことを証明できるわけではない。
このようになります。
マークの検出だけで、不利益な評価をしてはならない
海外では、大学側がAI検出機能の判定を活用した結果、「AI利用を疑われたものの、最終的に不正なしと判断された学生が複数いた」という事例や、「AI利用を疑われた看護学生が無実と判断されるまで6か月を要し、その間は成績証明書がresults withheld(結果保留)となったことで、卒業後の就職活動にも影響が及んだ」という事例が報告されています [4] 。
今回紹介したClaudeのマークの仕組みでも、100%の精度で判定するのが難しい以上、このようなリスクがあることは否定できません。
もちろん、AIを使ったかどうかは透明性の観点から見ると重要ですが、マークが検出されたことだけを根拠に、誰かに不利益な処分をすべきではないでしょう。
…これは私の意見ですが、AIを使ったかどうかを判定するのが困難である現状を踏まえると、人物の能力を評価するにあたっては、「実際に提出した成果物の内容をその人が理解し、自分の言葉で説明できるか」などを評価できる体制を整えるのが望ましいと考えます。
参考資料
[1] Anthropic「How Claude’s text watermark works」
https://www.anthropic.com/news/claude-text-watermark
[2] Anthropic「How Claude marks AI-generated content」
https://support.claude.com/en/articles/16266773-how-claude-marks-ai-generated-content
[3] Dathathri S, et al. Scalable watermarking for identifying large language model outputs. Nature. 2024;634:818–823.
[4] ABC「University wrongly accuses students of using artificial intelligence to cheat」
https://www.abc.net.au/news/2025-10-09/artificial-intelligence-cheating-australian-catholic-university/105863524
