実際、AIに対してどのような健康相談がされている?

元論文:Public use of a generalist LLM chatbot for health queries – Nature Health

今回の論文は、Microsoft Copilotに寄せられた50万件超の健康関連の会話を分析し、人々が実際にどのような健康の悩みを、どの時間帯に、どの端末から、誰のために相談しているのかを明らかにしたものです。

研究の方法

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Table 1:健康関連の会話の12種類のカテゴリ
Costa-Gomes, B., et al. (2026). Public use of a generalist LLM chatbot for health queries. Nature Health. CC BY 4.0. 改変なし。

著者らは、2026年1月のMicrosoft Copilotの消費者向け利用ログから、健康関連の話題と判定された会話を解析しました。会話のサンプルは世界各地から集まったグローバルなサンプルで、約22%は米国由来(残りは世界各地)、約45%は英語の会話でした。また、企業・教育・商用アカウントは除外され、最終的な解析対象は617,827例でした。

解析対象となった会話は、以下の12のカテゴリに分類されています。

  • 健康情報・健康教育
  • 症状に関する質問や健康上の懸念
  • 病状に関する情報や治療に関する質問
  • フィットネス、生活習慣、コーチング
  • 情緒的ウェルビーイング(心の健康)
  • 医療サービスへのアクセスや受診案内
  • 保険給付・保障・費用
  • 研究・学術支援
  • 医療関連の文書の作成
  • デジタルツールとフィットネスアプリ
  • その他の健康・フィットネス関連の質問
  • 健康相談以外の話題

さらに、その中で具体的にどのようなトピックが多いのかも、グループ分けして分析しています。

なお、この研究ではプライバシー保護のため、著者らは実際の会話は直接閲覧していません。
名前、電話番号、メールアドレス、住所、政府発行ID、金融情報などの個人識別情報(PII)を自動除去したのち、AIが元の会話を短い要約に変換し、その要約を使って分類・解析しています。

結果

1. 健康相談の中心は「健康情報・健康教育」で、自分の疾患に関する質問が多い
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Fig. 1:健康関連の会話をカテゴリごとに分類した結果
Costa-Gomes, B., et al. (2026). Public use of a generalist LLM chatbot for health queries. Nature Health. CC BY 4.0. 改変なし。

最も多かったカテゴリは「健康情報・健康教育」でした。
さらに、このカテゴリの中の話題を分析したところ、

  • 治療・医薬品・処置がどう機能するか:18.8%
  • 疾患の原因・症状・危険因子:11.9%
  • 健康的な食事、サプリメント、食品安全の助言:9.7%
  • 解剖や生物学の概念の易しい説明:8.0%
  • 日常のウェルネス、予防、セルフケア:6.5%

このような結果となりました。
つまり、漫然とした健康知識よりも、具体的な治療や疾患に関する質問が多いことが示唆されました。

2. モバイル端末では個人的な相談、デスクトップPCでは仕事・学業用途が多い
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Fig. 2:モバイル端末とデスクトップPCからの使用率の日内変動
Costa-Gomes, B., et al. (2026). Public use of a generalist LLM chatbot for health queries. Nature Health. CC BY 4.0. 改変なし。
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Fig. 3:端末別の相談の目的(斜線がデスクトップ端末)
Costa-Gomes, B., et al. (2026). Public use of a generalist LLM chatbot for health queries. Nature Health. CC BY 4.0. 改変なし。

Fig. 2では、昼間はデスクトップPCからの相談が優勢、夜間はモバイル端末からの相談が優勢という日内変動が示されています。

また、Fig. 3を見てみると、端末別の相談の目的の分布には有意差があり(χ²(8, N = 612,330) = 73,981.6, P < 0.001)、特に差が大きかったのは以下のカテゴリです。

  • 症状に関する質問や健康上の懸念
    モバイル:15.9%(95% CI 15.8–16.0)
    デスクトップ:6.9%(95% CI 6.8–7.0)
  • 情緒的ウェルビーイング(心の健康)
    モバイル:5.1%(95% CI 5.0–5.1)
    デスクトップ:3.0%(95% CI 2.9–3.0)
  • 研究・学術支援
    モバイル:5.3%(95% CI 5.2–5.3)
    デスクトップ:16.9%(95% CI 16.8–17.1)
  • 医療関連の文書の作成
    モバイル:2.7%(95% CI 2.7–2.8)
    デスクトップ:15.7%(95% CI 15.6–15.8)

モバイル端末は「今現在の自分や家族の健康に関する不安の解消」を目的に使われやすく、デスクトップPCは「調べる・まとめる・書類を作る」といった作業の支援を目的に使われやすい傾向がみられました。

3. 夜は症状の相談やメンタル関連の相談が増える
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Fig. 4:時間帯別の相談内容の変化
Costa-Gomes, B., et al. (2026). Public use of a generalist LLM chatbot for health queries. Nature Health. CC BY 4.0. 改変なし。

Fig. 4を見てみると、夜から深夜にかけて個人的な健康相談が増えることが示唆されています。

具体的には、

  • 情緒的ウェルビーイング(心の健康)
    朝:3.3%(95% CI 3.3–3.4)→深夜:5.2%(95% CI 5.0–5.4)
    χ²(23, N = 613,026) = 903.3, P < 0.001
  • 症状に関する質問や健康上の懸念
    朝:10.6%(95% CI 10.4–10.7)→深夜:13.4%(95% CI 13.1–13.8)
    χ²(23, N = 613,026) = 1,445.8, P < 0.001

このような差が出ています。
著者らは、医療サービスへのアクセスが最も乏しい時間帯に、AIが相談先の一つとして使われている可能性があると述べています。

4. 自分自身だけでなく、家族の相談にも使われる
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Fig. 5:個人的な健康相談の3カテゴリが、誰に関する相談かを示すグラフ
Costa-Gomes, B., et al. (2026). Public use of a generalist LLM chatbot for health queries. Nature Health. CC BY 4.0. 改変なし。

AIに対する健康に関する相談は、多くはself(自分自身)に関する相談となっていますが、「dependent(子ども、高齢の親、パートナーなど)」に関する相談も比較的多くなっています。

  • 症状に関する質問や健康上の懸念
    self:79.9%
    dependent:14.5%(95% CI 12.4–16.8)
  • 病状に関する情報や治療に関する質問
    self:80.4%
    dependent:14.9%(95% CI 12.6–17.6)
  • 情緒的ウェルビーイング(心の健康)
    self:72.0%
    dependent:7.6%(95% CI 5.4–10.5)

著者らは、AIは自分自身だけでなく、子ども、高齢の親、パートナーなどを気遣う「ケアラー支援ツール」としても使われていると述べています。

5. 他のカテゴリの主な話題は
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Extended Data Table 1:主要カテゴリごとの主な話題
Costa-Gomes, B., et al. (2026). Public use of a generalist LLM chatbot for health queries. Nature Health. CC BY 4.0. 改変なし。

結果 1. で「健康情報・健康教育」の主な話題を紹介しましたが、他の主要カテゴリの話題も見てみると、以下のような話題が中心になっていたようです。

  • 症状に関する質問や健康上の懸念(全体の10.9%)
    • 新規または予期しない症状の理解:32.0%
    • 繰り返す・長引く症状の意味づけ:14.6%
    • 検査・画像結果の易しい説明:12.8%
    • 薬の安全性・副作用・相互作用:6.8%
    • 乳幼児・小児の健康と発達:6.8%
  • 病状に関する情報や治療に関する質問(全体の8.0%)
    • 薬・サプリ・治療に関する質問:18.5%
    • 病状の進行の理解:12.2%
    • 自宅における軽い外傷のケア:12.1%
    • 慢性疾患に関連するルーティンとセルフケア:10.4%
    • 皮膚・髪の問題への実践的アドバイス:7.3%
  • フィットネス、生活習慣、コーチング(全体の9.0%)
    • 個別目標向け食事プラン・カロリー・栄養アドバイス:26.6%
    • 筋力トレーニング開始・進行:13.4%
  • 情緒的ウェルビーイング(全体の3.9%)
    • 自身の感情・行動上の課題の理解:30.5%
    • レジリエンスやストレス管理の実践ルーティン:13.4%
    • 現在の情緒の乱れへの支援:12.2%
  • 医療サービスへのアクセスや受診案内(全体の3.1%)
    • 近隣の医師・クリニック・専門医探し:43.1%
    • 医療関連の書類・資格関連の書類に関する支援:11.5%
    • 病院・診療所・手技・価格の比較:7.7%
    • 保険適用の理解:6.7%
    • 予約取得の支援:6.4%

これらは対象者全体を分母にした割合で見ると少ない数にはなりますが、医療従事者を始めとした専門家に相談する前後の理解を補助する役割として、AIはかなり浸透し始めていると考えられます。

注意点

  • Copilot単独のデータであり、他のサービスや他の集団の場合は結果が変わる可能性があります。
  • 今回対象となった会話のユーザーがその後受診したのか、回答をどう解釈したのか、また健康に関する判断が改善したのかは不明です。
  • 2026年1月の単月データであり、季節の影響を受けている可能性があります。特に1月は新年の健康目標の設定により、フィットネス関連の話題が増えている可能性があると著者らが指摘しています。

思っている以上に、生成AIに健康相談をしている方は多いかもしれません

今回はたまたまMicrosoft Copilotが対象でしたが、全世界でChatGPT、Gemini、Claude、Grok等々の生成AIが展開されていることを考慮すると、生成AIに健康相談をしている方は思っている以上に多い可能性があります。
実際、2026年1月7日のOpenAIのレポートによると、世界では毎週2億3,000万人以上がChatGPTに健康相談をしているとされています [1] 。

しかも、その使われ方は単なる情報の検索ではなく、「自分の今の症状をどう解釈するか」「薬を飲んだ後の体調変化は副作用なのか」「治療中の疾患とどう付き合うか」「夜の不安をどう解消するか」「家族の健康問題にどう向き合うか」「どの医療機関が合っているのか」…といった相談を、日常的に生成AIに対して行っているものと想像できます。

加えて、身近な専門家に相談するのが難しい夜間でも生成AIは対応してくれることもあり、夜から深夜にかけて個人的な健康相談が増えているという結果も無視することはできません。

人間の薬剤師にも相談してもらえるように…

最近の生成AIの性能を考慮すると、ただちに健康被害につながるような危険なアドバイスの出力自体は減っているかもしれませんが、それでも私はリスクが高いと考えています。
というのも、個人の健康に関わる重要な判断をするにあたって必要な情報が欠けていると、判断の精度が低下してしまうからです。

例えば生成AIに健康相談をするとき、意図的かどうかは別として「自分にとって都合の良い情報」のみを提供して質問してしまうと、ユーザーに迎合する傾向がある生成AIはユーザーが欲している意見(安心できる意見)を自然と出力してしまい [2] 、結果的にユーザーを「本来回避できたはずの重大なリスク」にさらしてしまう可能性があります。

薬剤師に限らず人間の医療関係者であれば、その相談に対して必要な情報が何かを判断し、不足している情報があれば追加でお伺いすることができます。定期的に受診・来局されている方であれば、過去の情報からより個別化されたアドバイスも可能です。

ゆえに私は、調剤薬局は「生成AIに健康相談をした後でも気軽に相談してもらえるような窓口」になる必要があると考えています。
そのためには、生成AIが簡単に使える現代の方々の行動原理を理解したうえで、客観的に見て必要な情報を特定し、必要な情報を相手に確認し、そして相手の特徴に合わせたアドバイスができる薬剤師が必要です。

ただし、どれだけ高度な知識を持っていて的確なアドバイスができても、気難しい薬剤師には相談しづらいものです。
なので、より多くの方々が積極的に話をしたくなるような、丁寧で柔軟なコミュニケーションができるようにしておくことも重要です。


参考資料

[1] OpenAI「ChatGPT ヘルスケアが登場」
https://openai.com/ja-JP/index/introducing-chatgpt-health/

[2] Jiang, Y., Guo, L., Wu, Y., Caliskan, A., Mitra, T., & Shen, H. (2025). Beyond one-way influence: Bidirectional opinion dynamics in multi-turn human-LLM interactions. arXiv. https://doi.org/10.48550/arXiv.2510.20039

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