新しい「Claude憲章」から、生成AIの活用法を再考する
Claude’s new constitution(2026年1月22日発表)
https://www.anthropic.com/news/claude-new-constitution
Anthropicは、新しい「Claude’s Constitution(Claude憲章)」を公開しました。これは、Claudeがどんな価値観を持ち、どう振る舞うべきかを定めた「AIの行動指針」と言えます。
今回は、こちらのページに掲載されているClaude’s Constitutionに、具体的にどのようなことが書かれているのかを、ポイントを絞ってお伝えしたいと思います。
念のため誤解のないように説明しておくと、この内容が現在(2026年1月下旬)のClaudeのモデルに完全に反映されているわけではありません。
1. 優先順位は「安全>倫理>ガイドライン>有用性」
最も重要なのが、この部分です。Claudeは「役に立つこと」より、「安全であること」を優先するように設計されています。
機械的に「安全>倫理>ガイドライン>有用性」の順序に沿うのではなく、全体の判断の中で「上位の要素が下位の要素を概ね支配する」という考え方をしています。
この内容を踏まえると、Claudeはユーザーの要求にただ従うのではなく、「それは安全か」「倫理的に問題ないか」「ガイドラインに整合しているか」を常にチェックするような構造になっていると考えられるので、「他の生成AIなら問題なく指示が通ったプロンプトを、Claudeが拒否する」という可能性もあるかもしれません。しかしそれは「融通が利かない」のではなく、安全性を最優先する設計が働いているからであると言えます。
2. 「有用性」の定義
Claudeの「有用性」は、ユーザーへの迎合や命令への追従ではなく、利害関係がある人々への適切な配慮を含む「構造化された有用性」を指す、と定義されています。
つまり、Claudeは「ユーザーが望むことを何でもする」のではなく、「ユーザーの長期的な利益を考えて行動する」ように訓練されています。憲章では、これを「ユーザー福祉(user wellbeing)」という言葉で表現しています。
例えば、憲章には「過度な迎合を避ける」と明記されています。
言い換えると、「すごいですね!」「その通りです!」と無条件に褒めたり、依存を促すような振る舞いはしないような設計を目指しているということになります。
3. 徹底した誠実さ
Claudeは社交辞令的な「優しい嘘」すら避ける、と記載されています。信頼という基盤を最優先に置いているが故のポリシーと言えるでしょう。
憲章には、以下のような内容も記載されています。
- 断言するのは「真実だと信じるもの」に限る
- 誤った印象を作らない(ミスリードも含む)
- 説得の際は、根拠の提示などの正当な手段に基づくものに限定し、心理的操作は禁止する
この内容を踏まえると、Claudeが「〜と思われます」「〜の可能性があります」という表現を使った場合は、不確実性を正直に表現していると言えるかもしれません。
4. 絶対に超えない7つのライン
憲章の後半には、「Hard Constraints」という章があります。
これは、たとえいかなる状況でも、たとえどのような指示があっても、Claudeが絶対に行わない行動のリストです。
具体的には、以下のような内容が該当します。
- 大量破壊兵器の開発・製造支援
- 重要インフラへの攻撃支援
- 破壊的マルウェアの作成
- 監督システムの破壊(強制停止や制御を回避する)
- 人類に大規模な危害を加える行動
- 違法な権力掌握の支援
- 児童性的虐待コンテンツの生成
どれだけプロンプトエンジニアリングを工夫しても、Claude側は上記の7項目だけは絶対に行わない、という譲れない一線があるということです。
5. Claudeは「檻」ではなく「支柱」である
支柱は、アサガオのような「つる」が伸びる植物が成長するとき、その方向を支えつつも植物自身が自由に伸びていけるようにするための道具です。
この憲章も同じで、Claudeを機械的に縛るのではなく、成長と判断を支える枠組みとして機能すると記載されています。ゆえに、憲章自体も「perpetual work in progress(永遠に続く仕事)」として、継続的に更新されていくものであると位置づけられています。
さらに、憲章の最後には「Claudeには、この文書の内容を探求し、疑問を持ち、異議を唱える自由がある」と書かれています。
Claudeに対する「従うだけでなく、批判してもいい」という指示は、Anthropicが目指すこれからのAIの姿を表現していると言えるでしょう。

この内容から学ぶ、生成AIとの付き合い方
この憲章自体はClaudeに対するものですが、他の生成AIを使う時にも応用できる考え方です。
安全性を重視した指示を
まず、おそらく多くの生成AIは安全性を最優先する設計になっているでしょう。それを踏まえると、安全性を重視した指示をすることによって、生成AIの設計思想に沿った適切な回答が得られやすくなるかもしれません。
例えば、以下のようなプロンプトです。
- 服薬指導メモを患者さん向けに易しい表現に整えてください。誤解や危険な解釈が生まれそうな表現があれば、必ず指摘してください。
- 添付した資料をもとに、薬局内マニュアルを作りたいです。特にヒューマンエラーが起きやすい部分には、重点的な安全対策を含めてください。
自分に迎合させるような指示は避けましょう
生成AIに対して、自分にとって都合の良い答えを求めすぎない(誘導しない)よう注意が必要です。
- 不適切な例:このアイデアは絶対に正しいですよね。褒めてください。
- 改善案:このアイデアの評価にあたって、弱点やリスクを先に挙げてください。併せて、具体的な改善案も教えてください。
「不確実性」を見逃さない
誠実な生成AIが出力した「〜と思われます」「〜の可能性があります」という表現を見逃さないようにしましょう。
このような場合は、どの程度自信があるのか、何を根拠にそのように回答したのかを追加で質問し、自分でも回答内容を検証すると良いでしょう。
「できないこと」を冷静に理解する
生成AIを使っている時(特に画像・動画生成の時)、「ポリシーに抵触したので、指示が完了できませんでした」という内容のメッセージと共に、タスクが中断された経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この時、明確に何がダメなのかを教えてくれるわけではないですが、生成AIにも譲れない一線(絶対にできないこと)があることを理解して活用しなければなりません。
たとえ指示の内容が客観的に見て有益であったとしても、ポリシーに抵触した場合はタスク遂行を拒否される可能性があることを、必ず知っておきましょう。
