Googleの「AIによる概要」のリスクに対して、調剤薬局ができること
元記事:GoogleのAI Overviews、医療情報で危険な誤情報を提供──YouTubeを最も引用と調査で判明
2026年1月現在、Googleでキーワードを入力して検索すると、検索結果の画面に「AIによる概要」が表示されます。
この機能は、AIが生成した情報の総合的な要約を表示するものなのですが、上記記事によると、この機能が医療分野において危険な誤情報を提供しているという実態が、The Guardianの調査で明らかになったとのことです。
Guardianの調査では、膵臓がん患者に高脂肪食品を避けるよう誤ってアドバイスするなど、専門家が「本当に危険」と評価する事例が発見された。
肝機能検査や女性のがん検査についても「完全に間違った」情報が提供されていた。ドイツでの50,000件以上の健康関連検索を分析した研究では、AI Overviewsが最も引用する情報源がYouTubeであることが判明した。
バーゼル大学の研究者Hannah van Kolfschootenは、ユーザーが複数の情報源を比較できず、医療基準を満たさない情報源に基づいた「規制されていない医学的権威」が生まれていると指摘する。
https://innovatopia.jp/ai/ai-news/78555/ より一部引用
私が遭遇した具体例
まずは、こちらの画像をご覧ください。

非常に「それらしく」誤った情報が出力されています。
薬剤師であれば、その事実(誤った情報であること)に気づくことが可能ですが、仮にレボフロキサシン点眼液1.5%が処方されたお子さんの保護者がこの情報を見た場合は、確実に不安になることでしょう。
この情報を見てすぐに相談してくれればまだ良いですが、実際のところ不安に思った保護者が自己判断で中止してしまうケースも考えられ、少なからずアドヒアランスに影響を与えることになります。
では次に、こちらの画像をご覧いただきましょう。

この薬は、少なくとも私が勤務している環境においては、ほぼ「低亜鉛血症」に対して処方されている印象です。
上記の「食前1時間以上または食後2時間以上」はウィルソン病に対して処方された場合の用法であり、低亜鉛血症の場合は、通常1日2回食後に服用します。
情報自体が誤っているわけではないのですが、情報不足で誤解を招きかねない要約です。
最も引用されやすい情報源は…
innovaTopiaの記事によると、
さらに注目すべきは、SEO分析プラットフォームSE Rankingが実施した大規模調査の結果です。ドイツにおける50,807件の健康関連検索を分析したところ、AI Overviewsが最も引用する情報源はYouTubeであることが判明しました。YouTubeは全引用の4.43%を占め、これは主要な医療ポータルサイトの1.5倍に相当します。学術誌や政府系医療機関の引用はわずか1%程度に過ぎませんでした。
https://innovatopia.jp/ai/ai-news/78555/ より一部引用
とのことです。
従来の検索であれば、ユーザーは複数の情報源を比較し、批判的に評価する「チャンス」がありました。しかし「AIによる概要」の場合は、検索結果の最上部に、単独の回答(要約)を自信満々に提示します。
AIによる概要の主要な引用元であるYouTubeの動画の中には、EBMの観点に照らして適切とは言えない内容のものも存在します。しかしそのような情報源であっても、キーワードに関連していれば情報源として引用され、それをもとに生成された要約が「あたかも信頼できる情報であるかのように」提示されてしまうという、リスクの高い構造となっているのです。
我々調剤薬局の薬剤師ができることは
このような事実を知ってしまうと、患者さんに対して「AIによる概要は信用したらダメですよ」「生成AIの回答は、100%正確ではないんですよ」といった注意喚起をしてしまいそうですが(それも大事ではあるのですが)、最も重要なのは、我々調剤薬局の薬剤師が、患者さんの「最初の」医薬品相談窓口として機能できることです。
具体的に言うと、生成AIより先に相談してもらえるような信頼関係、もしくは「AIによる概要(もしくは生成AI)がこんなことを言ってるけど…」と相談してもらえるような信頼関係を、調剤薬局が築かなければなりません。
もちろん、「風邪をひいて受診しました」といった方の場合は、その1回のみでご縁が切れることもあります(良いことです)。しかし、その1回のコミュニケーションを丁寧に行うことで、ふとした時に「あの薬局に聞いてみよう」と思ってもらえるかもしれません。
人間にしかできない丁寧なコミュニケーションは「調剤薬局の生存戦略」の一部としてもよく話題になりますが、それは結果的に、AI(生成AI含む)のハルシネーションによって生じうる健康被害を抑制することにもつながります。
薬剤師が普段行っている服薬指導は、患者さんに医薬品に関する正しい知識をお伝えしたうえで医薬品を安全に管理してもらうためのものですが、最も重要なのは、その先にある「患者さんのQOLの向上」であることを念頭に置いて、業務にあたりましょう。