アドバイス4:必ず生成AIを使わないといけないわけではありません
「生成AIによる業務効率化」という言葉が、世の中にたくさん飛び交う時代になりました。
ゆえに、「私も生成AIを使って業務効率化しないと…」「時代に取り残される…」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、生成AIを活用することが目的になってはいけません。
計数調剤(ピッキング)の場面を考えてみましょう

とある錠剤が「1回1錠、1日3回毎食後、14日分」処方されたとしましょう。
実際にこの内容で調剤するとき、この錠剤を合計何錠集めたら良いのか計算することになりますが、その際にみなさんであればどのようなツールを活用しますか?
普段調剤をしている人であれば暗記しているレベルの内容ですが、ほとんどの方は暗算するか、電卓を使って計算するでしょう。もしかしたら筆算をする人もいらっしゃるかもしれません。
ただ、Excelを使う人はほとんどいないでしょう。
仮に目の前にパソコンがあって、最低限の情報を入力するだけで取り揃える錠剤の数を弾き出してくれるシステムを作っていたとしても、調剤棚と監査スペースを往復することを考えると、先述の電卓を使う方が持ち運びも容易で早いですし、合理的です。
Excelは非常に有益なツールで、私も生成AIが登場するまでは、Excelを活用して業務効率化する手段を日々模索していました。しかし、単純な計算のような「他の手段を使った方が早くて合理的」というケースでExcelを活用しても、業務効率化は見込めません。
有益なツールも、使い所を誤ると業務の質を下げてしまいます。そして最悪の場合、そのツールの評価が不当に低くなってしまう可能性も考えられます。
生成AIの場合は、用途によっては「正確性」の担保も必要です

生成AIの避けられないリスクとして「ハルシネーション」が挙げられますが、調剤薬局の現場で生成AIを活用することを考えたとき、用途によっては100%の正確性が求められるので、生成AIによる業務効率化が期待できても、正確性が担保できなければ使用しない方が良いケースもあります。
例えば、処方箋に記載されている薬剤、および患者さんの併用薬や既往歴等と照らし合わせ、処方内容に問題がないかをチェックするときに、生成AIを活用することを考えてみましょう。
処方されている薬剤の情報を入力(個人情報を含まないテキストや画像)して、相互作用について検証してもらうことになりますが、この要件でハルシネーションを含む出力がされて、内容をそのまま活用してしまった場合は、健康被害が生じる可能性があります。
ゆえに、このような用途で使用する場合は、添付文書を情報源にする(プロンプトで指示ではなく、明確に情報源として添付する)などして正確性を担保する必要があります…が、そこまでするのであれば、自分で添付文書を開いたり、レセコンや電子薬歴のチェックを参照した方が速くて正確なはずです。
これは私個人の見解ですが、100%の正確性が必要な用途で生成AIを活用するのは、「業務効率化」および「正確性の担保」の観点から、あまり積極的にはおすすめできません。
今回のアドバイスのまとめ
生成AIはさまざまな業務をサポートしてくれますが、全ての業務を効率化できるわけではありません。
単純な四則演算にExcelを持ち出すことがないのと同様、便利なツールも使い方を誤ると業務の質を低下させてしまいます。
また、生成AIを活用することが目的にならないようにしましょう。
「生成AIで本当に効率化できるか」「代替手段はないか」「間違いが許されない用途の場合は、正確性も両立できるか」といったことを考慮した上で、採用を検討しましょう。