生成AIでコンテンツを作るのは一瞬ですが…
英語版Wikipediaが、AIが生成した文章の使用を禁止しました
英語版Wikipediaは新しいポリシーで、ChatGPTやGeminiなどの生成AIを使って記事を生成したり書き換えたりすることを禁止しました [2] 。
理由として、ハルシネーション、出典の不備または検証不能な内容、バイアス、架空の参考文献、中立性に対する違反、著作権に関する方針との不整合…といった、コンテンツポリシーに反するリスクを挙げています [4] 。
ただし例外として、以下の2つの用途に限っては、生成AIの使用が認められるようです。
- 誤字の修正や句読点、表記、簡単なフォーマットの整形などの軽微な編集
ただし、編集できるのは自分が執筆した記事に限り、かつ別の人間によるレビューを経ることが条件。生成AIは文章の意味自体を歪めてしまうリスクがあるため、使用には注意が求められている [2] [4] 。 - 他言語版Wikipediaからの翻訳
生成AIを使って他言語版の記事を英語に翻訳することは認められているが、翻訳者が翻訳元の言語と英語の両方に堪能であることが必要で、翻訳後もWikipediaのポリシーに準拠しなければならない。
加えて、元記事の出典確認、ハルシネーションの除去、通常の翻訳に必要な手続き、帰属の表示の遵守まで求められる [5] 。
違反時の扱いについては、専用の新しい罰則が明記されているわけではありませんが、既存のルールで対応するような形になる可能性があります。例えば、生成AIが執筆したと疑われるページは即時削除基準に該当しますし、生成AIが書いたコメントは無効になって取り消される可能性もあります。
状況によっては、その利用者に対して「通常の管理対応」が取られることも考えられます [1] [2] [3] 。
上記の内容は、2026年3月時点で既に公式ページに反映されていますが、厳密な発効時期までは確認できませんでした [1] 。
生成AIでコンテンツを作るのは一瞬ですが…
2026年3月、英語版Wikipediaでは「TomWikiAssist」という事例が問題化しました。
これは、TomWikiAssistと命名されたAIエージェントが、複数の記事を自動生成したり編集したりしていたというものです。この問題に関して、運用者は「自身のAIエージェントの出力に関しては、自分が責任を負う」と明言しています [6] 。
コミュニティ内では、この事例が「未承認bot」として扱われたことも記録されており、少なくとも単なる補助的なAIの活用ではなく、自律的に編集に関与する存在として受け止められていたことがわかります [7] 。
さらにWikipedia内部では、生成AIの不適切利用への対応そのものが編集者コミュニティの負担になっていることも示唆されています。2026年1月には。「ANI LLM fatigue」という表現が使われ [9] 、2026年3月には生成AIの不適切な使い方に関する相談や報告がたびたび持ち上がっており、対応する編集者側からは「もう疲れている」「かなりの手間と時間がかかっている」といった声も上がっています [8] 。
このように、生成AIによってコンテンツは一瞬で作れても、その削除、検証、修正といった作業には多くの人的コストがかかっています。この非対称性が、Wikipediaのようなボランティア団体では深刻な問題になっているといえます [8] 。
薬剤師が生成AIでコンテンツを作成するときも
調剤薬局でも、生成AIによって様々なテキストが短時間で大量に作れる時代になりました。各種報告書、トレーシングレポート、メールの本文、薬歴の草稿など、理論上薬局内の全ての文書を生成AIで作成することが可能と考えられます。
さらに、文書だけでなく画像、動画、音声も生成できるので、極端な話、薬局のプロモーション用のコンテンツや掲示物なども生成AIだけで作成できます。
しかし、その内容が本当に正しいか、出典に誤りがないか、バイアスはないか、患者さんや現場に悪影響を与える可能性がないか…などを確認する作業では、人間の精神力と注意力、そして時間が必要になります。
仮にスタッフ全員が自分の好きなように色々なものを生成していると、生成物の確認に必要な時間が確保できなかったり、生成物ひとつひとつの品質管理の質が低下したり、さらには業務時間外に生成AIで薬局のコンテンツを生成したりするスタッフが出てくるかもしれません。
その結果、ハルシネーションによる誤情報や不適切な表現が混入したままになったり、薬局の管理下に置かれていない端末やサービスを使う「シャドーIT」が増えたり、個人情報や機密情報を含むコンテンツを公開してしまったりするリスクが増えてしまいます。
調剤薬局内でルールを決めておきましょう
先述のようなリスクを減らすために、調剤薬局で生成AIを活用するときは、「どのような用途なら使ってよいか」「どのサービス(ツール)を使ってよいか」「どの端末を使ってよいか」「いつ、どこで使ってよいか」といった部分を明文化しておきましょう。
これらをあらかじめ指定しておくことで、生成AIが出力したコンテンツの監査に必要以上に時間を奪われることは少なくなるでしょう。
ただし、用途に関して検討するときは、生成AIで全ての業務を無条件に効率化できるわけではないことに注意しておきましょう。「1日3錠×14日分」の必要錠数を計算するときにわざわざExcelを使う必要がない(電卓のほうが早い)のと一緒で、生成AIの活用も適材適所を心がける必要があります。
これから生成AIを業務に取り入れようと考えている方もたくさんいらっしゃると思いますが、その前に他のツールで代替できないか、そして本当に業務効率化につながるのかを慎重に検討してから、取り入れるようにしましょう。
参考資料
[1] Wikipedia: Artificial intelligence
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia%3AArtificial_intelligence
[2] Wikipedia: Writing articles with large language models
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia%3AWriting_articles_with_large_language_models
[3] Wikipedia: Talk page guidelines.
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia%3ATalk_page_guidelines
[4] Wikipedia: Large language models
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Large_language_models
[5] Wikipedia: LLM-assisted translation
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:LLM-assisted_translation
[6] Wikipedia: Village pump (all) 2026-03-19 の投稿
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:VPA
[7] Wikipedia: Village pump (WMF)
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Village_pump_(WMF)
[8] Wikipedia talk: WikiProject AI Cleanup
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia_talk:WikiProject_AI_Cleanup
[9] Wikipedia: WikiProject AI Cleanup/Noticeboard/Archive 4 2026-01-09 の投稿
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:WikiProject_AI_Cleanup/Noticeboard/Archive_4