厚生労働省が、来年度から医療機関へのAI導入の実証試験に乗り出す?
元記事:看護師の引き継ぎ・入院患者の調整は「自律型AI」で代行、厚労省が実証試験へ…医療現場の人手不足に対応
厚生労働省は、AI(人工知能)が自律的に作業を代行する「AIエージェント」の医療機関への導入を促進するため、来年度から実証試験に乗り出す。
讀賣新聞オンライン「看護師の引き継ぎ・入院患者の調整は「自律型AI」で代行、厚労省が実証試験へ…医療現場の人手不足に対応」
“https://www.yomiuri.co.jp/politics/20260928-GYT1T00218/“より一部引用
厚生労働省が、医療機関へのAIエージェントの導入を促進しようとしていることが報道されています。
今回はこちらの記事の内容をもとに、何が行われようとしているのかを整理してみます。
記事によると
具体的にAIに何を任せようとしているか
具体的な作業では、日勤・夜勤の看護師の間で、患者の体調や投薬状況などの引き継ぎ事項の記録を自動で作成
讀賣新聞オンライン「看護師の引き継ぎ・入院患者の調整は「自律型AI」で代行、厚労省が実証試験へ…医療現場の人手不足に対応」
“https://www.yomiuri.co.jp/politics/20260928-GYT1T00218/” より一部引用
この記述から、AIが病院内の患者の状態・経過などの情報を電子カルテから取得し、日勤→夜勤、夜勤→日勤の申し送り事項を自動で作成することが想定されていると考えられます。
また、それだけでなく、AIに必要な情報を与えてどのような職員配置が適切かを提案させたり、入院患者を受け入れる病棟の調整をさせたり、さらに退院が決まった患者に関してAIが診療記録をもとに必要な文書を作成し、関連部署への連絡や提案をさせたりすることも視野に入っているようです。
つまり、厚生労働省が想定するAIエージェントの導入は、AIを病院内のオペレーションに組み込むという話に近いと考えられます。
厚生労働省はいかにして実証するか
厚労省は公募で複数の開発事業者を募り、開発費を助成する。
讀賣新聞オンライン「看護師の引き継ぎ・入院患者の調整は「自律型AI」で代行、厚労省が実証試験へ…医療現場の人手不足に対応」
“https://www.yomiuri.co.jp/politics/20260928-GYT1T00218/” より一部引用
記事によると、公募で集まった各事業者が5~10程度の医療機関と組む形で実証試験をすることが想定されており、この事業に関して、来年度(令和9年度)予算の概算要求に関連経費25億円を盛り込んだことも報じられています。
判断は人間が担うことになる
少なくとも今回の記事を読む限りでは、今回想定されているAIが行う業務は、以下のような業務となっています。
- 記録の作成
- 情報の整理
- 申し送り
- 病棟内の調整
- 人員配置の提案
- 関係部署への連絡
つまり、実際の診断・処置・看護などの業務をAIに全面的に任せるという話ではないので、判断は人間のスタッフの責任のもと行われることになると考えられます。
ただし、病棟内の調整や人員配置の提案は患者の安全にも直結するので、これらの業務をAIに一任させられるかどうかは慎重に検討すべきです。
AIをどこまで自律的に実行させ、どこから人間の承認を必須にするかが、今後の実証試験にあたって重要なポイントになるでしょう。
既に医療機関にAIがあったら、どうなる?
これはあくまで私の想像ですが、既に独自のAIを開発・導入している医療機関に厚生労働省のAIを組み込む場合は、既に存在している医療機関のAIと連携させるような形になると予想します。
例えば、ある病院が既に退院サマリーを作成するAIを運用している場合、「厚生労働省のAIが院内のAIを呼び出して、必要な文書を作らせたうえで関連部署への連絡準備まで進める」といったように、厚生労働省のAIエージェントが院内のAIをまとめるイメージです。
しかし、医療機関ごとにデータの形式などが異なると簡単には接続できないので、厚生労働省が要件定義を公開するとしている点を踏まえると [1] 、厚生労働省のAIが院内のAIを利用するにあたって、事実上の標準仕様が登場する可能性も…あるかもしれません。
同じ発想を薬局に応用すると…
そしてここからも私の想像ですが、もし今回のような構想のAIが薬局にもやってきたら、処方箋を受け付けたタイミングで薬歴(利用歴がある場合)、電子処方箋管理サービス、処方内容を確認し、相互作用のチェックまで済ませてくれるかもしれません。
また、在庫の状況を取得して発注してくれたり、服薬指導で確認すべきことをリストアップしてくれたり、さらには過去の受付状況を読み取って人員配置を提案してくれたりする可能性もあります。
非常に便利に見えますが、実際に導入するにあたっては、以下のような点を慎重に検討しなければなりません。
- どのデータまで閲覧させるか
- どこまで操作の権限を与えるか
- 人間は何を承認するのか
- 「AIが何をしたか」に関する記録をどこまで残すか
例えば処方監査や服薬指導に関しては、ルールベースの判断(例えば、添付文書等に基づいた判断)が常に正解になるとは限らないため、AIが提案した内容を薬剤師の責任のもと確認・承認できる設計が必要です。
また、過去の受付状況に基づいた人員配置に関しても、AIにどこまでデータを閲覧させるかによって、提案の質が変化します。
受け付けた人数だけでなく、実際の処方の内容、服薬指導や電話対応などに要した時間、薬歴の記入にかかった時間などをあわせて評価しないと、結果としてスタッフの負担の増加や患者満足度の低下につながる可能性があります。
AIが何でもできるようになりつつあるからこそ、AIに何を与え、どこまで任せるかを考えるのが大事になるでしょう。
参考資料
[1] 厚生労働省「ヘルスケアAXの推進について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001747870.pdf