LINEにAIエージェントが搭載されるようです
LINEヤフー、AIエージェントの新ブランド「Agent i」を本日スタート|LINEヤフー株式会社
何らかの形で「LINE」を日常的に使われている方も多いと思いますが、そのLINEに「Agent i」が搭載された、という発表になります。
概要
Agent iは、LINEとYahoo! JAPANの両方のサービスからシームレスにアクセスできるAIエージェントとのことで、具体的には以下のようなことができるようになるとのことです。
「Agent i」に「新しい家電がほしい」、「京都の観光モデルコースを作って」といった日常のさまざまな相談をすると、LINEヤフーの幅広いサービスと連携したジャンル特化型の領域エージェントが興味関心や状況に応じて情報を整理し、最適な選択肢を提案します。これにより、日常に寄り添いながらユーザーのあらゆる意思決定をスムーズに支援します。現在、商品選びをサポートする「お買い物」、観光モデルコースやおでかけのプランを手軽に作成できる「おでかけ」、「Yahoo!天気」と連動した「天気」など7種類の領域エージェント(β版[1] 含む)が利用可能です。今後、対応領域や機能を段階的に拡充していきます。
[1]自動車、人間関係、仕事関係、レシピはβ版として提供
LINEヤフー “LINEヤフー、AIエージェントの新ブランド「Agent i」を本日スタート”https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/020366/ より一部引用
上記に加えて、「複雑なタスクを代行する機能を2026年6月頃に実装する予定」とも記載されているため、毎日LINEを使って情報のやり取りをする人や、LINEから利用できる様々なサービスを使っている方にとっては、まさに「パーソナライズされたAIエージェント」となるでしょう。
ちなみに、ガイドラインを見てみると…
・AIを用いた回答・画像生成機能(以下「本機能」といいます)は、 LINEヤフー株式会社(以下「当社」といいます)が、 Google LLC(所在地:米国カリフォルニア州)、Google Asia Pacific Pte. Ltd. (所在地:シンガポール)、 Google Switzerland GmbH.(所在地:スイス)およびグーグル・クラウド・ジャパン合同会社(以下、あわせて「Google」といいます)のVertex AIまたはOpenAI OpCo, LLC、OpenAI, LLC (所在地:米国カリフォルニア州、以下「OpenAI」といいます)の生成 AIを利用して提供しております。
・本機能は、予告なく変更、停止または中止する可能性があります。また、本機能の変更などに伴い本ガイドラインが更新される可能性があります。本機能の利用にあたっては、必ず最新の本ガイドラインをご確認ください。
・13歳未満のお客様は本機能のご利用をお控えください。また、お客様が未成年者(ただし、13歳以上に限ります)である場合は、親権者等の法定代理人の同意を得た上で本機能をご利用ください。
LINEヤフー “生成AIを用いた回答・画像生成機能の利用に関するガイドライン”
https://search.yahoo.co.jp/guidelines/generativeaiguideline より一部引用
要約すると、Agent iはGoogleのVertex AIまたはOpenAIの生成AIを利用して提供される機能で、13歳未満の利用は不可、未成年者(13歳以上)は保護者の同意が必要、ということになります [3] 。
「領域エージェント」とは
最近Googleは、何でも一つの巨大なプロンプトに詰め込む「monolithic prompts」の問題点を指摘しており、タスクが増えるほど関係ない規則や知識を毎回抱え込むことになり、判断が濁りやすくなる可能性があるとしています [1] 。
また、Anthropicは自社のResearch機能で複数エージェント構成を採用しており [2] 、領域ごとに担当を分ける設計に一定の有効性があることを示唆しているといえます。
ゆえに、複雑かつ広い範囲の大量のタスクをこなす場合は、領域ごとに専門のAIエージェント(領域エージェント)を設定する設計が有効であると考えられますが、今回のAgent iも、「買い物領域専門のAIエージェント」「おでかけ領域専門のAIエージェント」「情報収集領域専門のAIエージェント」のように、領域ごとに専門のAIエージェント(領域エージェント)を配置する設計になっています。
企業・店舗向け機能も展開予定
上記以外にも、企業や店舗に向けて「LINE公式アカウント」でだれでも簡単にAIエージェントを構築できる「LINE OA AIモード」を2026年夏頃より順次提供予定です。本機能により、ユーザーのニーズや状況に応じた最適なコミュニケーションの提供が可能となります。また、戦略策定から施策の実行までの一連のプロセスを一気通貫で支援するAIエージェント「Agent i Biz」は2026年8月より提供予定です。
LINEヤフー “LINEヤフー、AIエージェントの新ブランド「Agent i」を本日スタート”https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/020366/ より一部引用
公式LINEアカウントを運用されている調剤薬局もあると思いますが、その公式LINEアカウントにAIエージェントを搭載させられるようになると考えられます。
これは私の想像になりますが、ユーザー側のエージェント(Agent i)と調剤薬局側のAIエージェントが「コミュニケーション」を取り、処方箋の送信や受付予約、会計を自律的に完結させてくれるようになるかもしれません。
メモリ機能とプライバシー
LINEヤフーの100を超えるサービスから得られる独自のデータを適切に活用し、多様な選択肢や新たな発見の機会を提供します。また、ユーザーの利用状況や設定に応じて、プライバシーにも配慮しながら、最適化された回答や支援ができるメモリ機能を2026年6月までに実装予定です。さらに、100万以上の多様な企業・店舗が活用する「LINE公式アカウント」の情報を活用し、将来的には「Agent i」と連携することで、より正確で信頼性の高い情報を拡充します。これにより、ユーザーの状況に合わせた最適な選択肢の提案を行います。
LINEヤフー “LINEヤフー、AIエージェントの新ブランド「Agent i」を本日スタート”
https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/020366/ より一部引用
Agent iでは、ユーザーの利用状況や設定に応じて最適化された回答・支援を行うとされています。
これは最近Googleから発表された、Geminiの「パーソナルインテリジェンス」機能と同様のコンセプトといえますが、このような機能はユーザーの利便性の向上につながる一方、ユーザーの嗜好や行動履歴が継続して参照される可能性があることも示唆しています。
さらに、Agent iのプレスリリースには以下のような記述もされています。
また、「Agent i」を起点として、「Yahoo! JAPAN」および「LINE」におけるエージェンティックな進化も予定しています。「Yahoo! JAPAN」トップページでは検索や通知、トピックス機能の進化を予定しているほか、「LINE」アプリでは友だちとのトークルーム内でのメッセージをもとに友だちとの関係性の分析や会話の提案をする「ムードを分析」やホームタブの最適化など、新たな体験を提供していきます。
LINEヤフー “LINEヤフー、AIエージェントの新ブランド「Agent i」を本日スタート”https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/020366/ より一部引用
この部分を見ると、LINE上のメッセージをもとに友だちとの関係性を分析する構想にも触れられていることがわかります。
先程挙げたGeminiのパーソナルインテリジェンス機能はGmailのメールを参照することができるため、普段Geminiのアカウントと同一のGmailを使用している場合は自分の嗜好などをかなり正確に反映しますが、LINEの場合は家族・友人等との日常会話や地域のサービスとの連携が中心であると考えられるため、よりプライベートな情報を反映したパーソナライズになる可能性があります。
一応プライバシーポリシーを見てみると、原則としてメッセージ内容は送信以外の目的に使わないとしていますが、「個別サービスにおいて、当社サービスの提供・維持、開発・改善、不正利用の防止、広告を含む最適化されたコンテンツの提供を行うために、お客様の追加の同意などに基づいてこれらの情報の一部を利用することがある」と明記されています [4] 。
後述しますが、LINEの設定から「情報利用に関するポリシーへの同意」をONに設定できるようになっていることから、Agent iもここでいう「個別サービスにおける追加の同意に基づく情報の利用」に該当する可能性があります。
プレスリリースで「プライバシーにも配慮しながら」と明記されていますが、Agent iのメモリ機能を実装するにあたっては、先述のプライバシーに関する部分の慎重な説明が求められるでしょう。
補足:不正アクセスによる情報漏えいの経過は
ご存じの方も多いかと思いますが、2023年10月に発覚した個人情報漏えい事案を受けて、LINEヤフー株式会社は2024年3月と4月に、総務省及び個人情報保護委員会から行政指導を受けています。
その後現在(2026年4月23日)に至るまでの経過を簡単にまとめると、以下のようになります。
当局からは、技術的不備だけでなく組織体制や責任の所在の曖昧さまで厳しく問われた形となりました。そのためLINEヤフーは、技術面の対策だけでなく、監査部門やセキュリティガバナンス委員会の設置、取締役会の改革、委託先管理の厳格化など、組織面の見直しも並行して進めています。
2026年3月末の段階では、NAVER向け委託の終了、NAVERの技術・システムの利用の終了、そして認証基盤の分離完了の段階まで到達し、2026年6月30日には分離済みのシステムに残る残存データの削除が完了する予定となっています。
ユーザー側は、何を注意すればよいか
まず、「情報利用に関するポリシーへの同意」の設定を確認しておきましょう。
LINEヤフーのプライバシーポリシーを見る限りでは、おそらくオプトイン方式(ユーザーが明確に許可しない限り、情報の送信・取得は行わない)であると思われるので、何も設定をいじっていない方は基本的にOFFの状態になっているはずです(私の環境でもデフォルトはOFFでした)。
なので、「LINEを毎日使い倒していて、Agent iをより深く自分にパーソナライズさせたい」という方はONにすればよいですし、「そこまで深く踏み込んでほしくない、そもそもAgent iを使うつもりがない」という方はOFFのままにしておきましょう。
実際に切り替える場合は、「設定(歯車マーク)」→「Agent i」→「情報利用に関するポリシーへの同意」のトグルボタンからONとOFFを切り替えることができます。

また、Agent iのチャットには不要な情報を入力しないようにしましょう。
意図的に個人情報を入力しないのはもちろんのこと、仕事に関する内容なども安易に入力しないよう注意が必要です。
特に調剤薬局の職員の場合は守秘義務が発生するので、患者さんの情報は口外しない、患者さんの情報を店舗外に持ち出さないことを徹底する必要があります。
そして、AIエージェントが提案してきた内容が、本当に自分に合っているのかどうかを必ず確認するようにしましょう。
いくらパーソナライズされていたとしても、100%の精度で自分が求める回答を出力してもらえるとは限りませんし、回答の内容を活用して何らかの不利益が生じた場合、その責任は自分が負うことになります。
普段生成AIを活用するときと同様に、最後の出力の品質管理を忘れないようにしましょう。
参考資料
[1] Google for Developers「Developer’s Guide to Building ADK Agents with Skills」
https://developers.googleblog.com/developers-guide-to-building-adk-agents-with-skills/
[2] Anthropic「How we built our multi-agent research system」
https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system
[3] LINEヤフー「生成AIを用いた回答・画像生成機能の利用に関するガイドライン」
https://search.yahoo.co.jp/guidelines/generativeaiguideline
[4] LINEヤフー「LINEヤフープライバシーポリシー」
https://www.lycorp.co.jp/ja/company/privacypolicy/
[5] LINEヤフー「総務省からの行政指導を踏まえた再発防止策及び進捗状況」
https://www.lycorp.co.jp/ja/privacy-security/recurrence-prevention/mic/
[6] LINEヤフー「個人情報保護委員会からの勧告及び報告等の求めを踏まえた再発防止策及び進捗状況」
https://www.lycorp.co.jp/ja/privacy-security/recurrence-prevention/ppc/
